福田和代著『東京ホロウアウト』読書感想文

ご無沙汰しております。ブルルスタッフnaomiです。

今年の夏休みの課題図書は福田和代さんの『東京ホロウアウト』と宣言しましたので、読ませていただきました。

オリンピックに沸く東京の物流業界が舞台で、近い将来に起こるのではないかと危惧されている物流崩壊がメインテーマになっており、世間では「預言書」などと話題になったようです。(物流ウィークリーさんでも紹介されてました)

 

結論から言うと、先が気になってページをめくる手と気持ちが逸る、どんどん読み進めちゃう系小説でした。

 

まずはあらすじから(出版社のサイトよりコピペしております)

2020年7月。オリンピック開催間近の東京で、新聞社に「開会式の日、都内を走るトラックの荷台で青酸ガスを発生させる」という予告電話がかかってきたのが、すべての始まりだった。直後、配送トラックを狙った予告通りの事件が次々と起こる。さらには鉄道の線路が破壊され、高速道路ではトンネル火災が。あちこちで交通が分断され、食料品は届かず、ゴミは回収されないまま溜まり続け、多くの観光客がひしめく東京は陸の孤島に――。
この危機から東京を救うため、物流のプロである長距離トラックドライバーたちが、経験と知恵を武器に立ち上がる!! 「今、起こりうる物流崩壊の危機」をリアルに描いた、緊迫のサスペンス。

 

主人公は長距離トラックドライバーの世良。

姫トラのエツミや鮮魚追っかけのトラなど、ドライバー仲間も登場します。

 

ここからはネタバレも含むレビューを書いていこうと思います。

 

 

 

テロ事件の発端は、とある産業廃棄物の違法投棄事件でした。

食べること、生活することには貪欲なのに、「生きていればゴミが出る」という意識が低い我々消費者にそれを気づかせようと、犯人たちはこのテロ事件を企てたのだとわたしは思いました。

 

確かに、「ご飯を食べる」「トイレットペーパーを買う」「掃除のための洗剤を買う」など、「インプットすること」はとてもわかりやすく、意識をむけやすいことだと感じます。

ですが、インプットすれば必ずアウトプットも必要になります。

東京23区は通常のゴミは無料で処理されます。都下では一部の市でゴミ袋が有料だと聞いたことがあります。23区に住むわたしたちは特に「ゴミを出す=無料」が当たり前に根付いている部分もあります。

 

そのような意識の薄さに警鐘を鳴らしていたのではないかと考えました。

 

整いすぎた物流の網目に関してもそうです。

 

物語では随所で道路の寸断、トラックの破損など物流への影響がありました。その度に、世良は「一部の道路の寸断で綻びが出るならば、この仕組みがそもそも無理があった」というようなことを言っていました。このことからも世良の聡明さがわかります。大きな胃袋を抱える東京は日増しに食糧がなくなり、スーパーやコンビニの棚が空っぽになります。

 

これはとてもリアリティがあるなぁと思いました。実際に、わたしもこの危機を体験したことがあります。東日本大地震の時です。

当時、「あ〜そろそろお米買わなきゃな〜」と思っていたところでした。もう2合ほどしかなかったと思います。ありがたいことにわたしの身近では地震の被害はほとんどありませんでしたが、どこに行ってもお米は買えませんでした。

 

しばらくはうどんやパスタで食事を済ませていましたが、それらもいつ買えなくなるか不安な毎日でした。結局、大阪にいる祖父にお米を宅配便で送ってもらいました。こんなことで多忙を極める宅配を利用してしまい、申し訳なく思いましたが、いつ始まるか終わるかわからない計画停電、頻繁に起こる大きな余震など、あの時は不安でいっぱいで、藁をもすがる思いでした。

 

「不安」というものは恐ろしいものです。

 

実体が掴めないからこそ、何が起こりうるのか先行きが見えないからこそ、何か将来を生きるための実体が欲しくなる。

 

当座の食糧というのは、安心を生むんだなと、その時実感しました。

 

 

ちょっと話が脱線してしまいました。

話を物語に戻します。

 

どうしても気になる点があります。

終盤、VICSをハッキングして渋滞を作り出し、爆発事故を起こした犯人についてです。

モノローグがごく短く出てくるんですが、「諸戸さんは逃げられたかな」と言っているので諸戸兄弟ではないことがわかります。

ということは、ラストで逮捕された5人の協力者のひとりということになります。

ハッキングした人物と仮に別だとして、その二人には迫ってほしかったと思いました。それとも、その人物だけ逃げ延びているのか・・・?

 

 

それにしても、途中途中で出てくる登場人物たちの自分の仕事への誇り、助け合いには泣かされました。トラックドライバーさんはもちろんですが、地域の人々の生活を、世界自体を守らんとするスーパー、食品製造の皆さんにも感謝したい。物語の中でも触れられていますが、物流や流通は災害など有事がないとありがたみを忘れがちになってしまいます。当たり前が当たり前ではないこと、改めて気づきました。世界は誰かの仕事でできている。

 

物語は全体を通して物流業界のことを詳しく書かれていたように思います。この点については、わたしよりももっと詳しいドライバーさんや配車係さんのご意見が聞きたいところ。

ぜひブログやこの記事へのコメントで皆さんの感想を聞かせてくださいね!

※なお、最近発売された文庫本はコロナ禍も反映した内容になっているそうです!そちらも読まれた方は感想をお教えくださいね!!!

 

物流戦士の皆さん、本日もどうぞご安全に。

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