オリオンをなぞる

トラックドライバーなるもの、真夜中でも運転することはザラにある。皆が寝静まった時間帯にライトを灯して、高速や下道をブンブン走り回るのに対し、鳥のさえずりが聞こえ、お天道様が地平線から登って来るとき、トラックのカーテンを閉め「おやすみなさい」と毛布をかぶる。そんな生活を繰り返すうちに、日付が分からなくなることがしばしば。これを僕のなかでは、「勝手にシンドバッド症候群」と呼んでいる。

「ココハドコ?ワタシハダレ?」

暗いカーテンを開ければ、そこは見知らぬ土地だった。かつて、川端康成が書いた小説にも、同じような節があった。雀の涙程度のおねんねタイムを終え、半分寝ぼけた状態で外の世界を見る。自分で運転したにも関わらず、地球に迷い混んだ宇宙人のように脳内で記憶を模索する。半分記憶喪失になりながらも現状を理解し、そして次の目的地へ向かうためにハンドルを握る。全てはそれの繰り返し。暗く途方もない道のりをただ、ライトを照らして前に進むだけである。

時は真夜中。満月に映るウサギさんが今日も相変わらず餅をついている。満月と言えば、十五夜か。そういえば、十五夜で食べる団子ってあれはみたらし団子なのかな。それとも、三色団子なのかな。と、どうでもいいことを考えながら、トラックを前へと進める。辺りは車の気配すら感じない静けさである。しかし、真夜中の運転で無心になれば、一気に睡魔が襲いかかってくるので、常に脳内は活性化させないといけない。脳内を休ませていいのは家のベッドで寝てる時か、女の子とセックスしてる時かのどちらかである。そういえば、仕事が忙しくて女の子と長くセックスしてないな。うん、決めた。地元に帰ったらセフレと朝までセックスしよう。そんなことを考えながら、今年も良いことが起きるかなと願いつつ、フロントガラスから星空を見上げる。キラリと、一筋の流星が光っては、一瞬のうちに消えていった。

窓を開け、ツンと凍るような風が頬に当たる。煙草を吹かし、吐息と共に白く舞い上がって儚く消えて行く。雲ひとつない満天な星空。月の光にライトアップされた黒いキャンパスにオリオン座が堂々と大きく描かれている。夜はまだ長い。行けるとこまで行ってみるか。

誰一人車も通らない深夜のハイウェイ。深夜特急と化したトラックは止まることなく、いつまでもいつまでも、走り続けていた。眠気覚ましの煙草をもう一本咥える。相変わらず、外は不気味で真っ暗な世界だ。まるで、宇宙人になった気分。そうだ、宇宙人といえば……

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