さよならイエスタデイ

高温多湿。ゲリラ豪雨。そして、焼け殺すかのような猛暑。あまりにも暑すぎて仕事に集中できないどころか、ブログの書き込みも疎かになってしまうほどの暑さ。ムシムシした砂漠で快適なオアシスを探すかのように、トラックへ逃げ込む。しかし、肝心なときに限ってそのトラックのエアコンがぶっ壊れている時がある。

嗚呼、名もなき神よ、唯一の救いの場所にどうして更に試練を与えようぞ。汗の臭いがツーンと含んだレモンの酸っぱい香りを醸し出すタオルを首にかけ、コンビニで買ったボディペーパーをすぐに広げる。

キンキンに冷えてやがる……ッッ!!

ヒンヤリとした心地よい冷たさに心奪われながら、垢擦りの要領でゴシゴシと上半身を拭きあげる。

サーッと拭くごとに皮膚の熱がペーパーに奪われ、その箇所から気化熱でキンキンに体を冷やしていく。腕から胸へ、胸から反対側の腕へ。まさに、上半身横断。敏感な乳首に冷たいフローラルのそよ風がふわりと当たり、ピクピクと嬉しそうに動く。

首回り、耳の裏を攻め、極めつけは顔面へ。メンソールが効いたボディペーパーを顔面に塗りたくる。やがて、ジワジワと燃えるような痛みが襲いかかる。冷える気持ちよさではない。メンソールが急激に気化することにより、全身の毛穴から水分が吸い込まれていく。同時に、皮膚ごと剥がれていくかのような、両目が飛び出す勢いで喉仏の奥からありったけの感情が溢れだした。

「キエエエエエェェェェェッッッッッッ!!!!!!!!(猿叫)」

 

窓をフルオープンにしているため、場内に奇声が延々と響き渡る。辺りは一面、誰もいない。緑一色の山が広がり、ザワザワとぬるい風が吹いては木々を揺らしていく。

この解放感、たまらない。この痛みが、僕を強くする。

痛みが収まり、ぬるい風が顔面を包み込み、フローラルのそよ風へと変貌する。滝水に打たれる爽快感。眠気も吹き飛ばす破壊力。まさしく、破壊の救世主(メシア)。役目を果たした救世主は、ただのティッシュと成り果て、ゴミ袋へ召還されていく。もう一枚、更にもう一枚、救世主に救いの手を差し出す。キンキンに冷えた救世主の次なるターゲットは、そう。汗でムンムンに熱を発するもうひとつの分身、下半身である。

 

運転席はただ一人。誰も邪魔する者はいない。窓は開けたままで周りをカーテンで仕切る。狭い空間にポツンと一軒家。ズボン、パンツを脱いで準備は万端。股の下のポニョはイソギンチャクのような形をしている。イソギンチャクの周囲は汗とその他もろもろの混ざりあい、集合体から発する臭いが鼻腔へ突き刺さり、脳髄に刺激する。レモン臭のタオルとは比べ物にはならない臭いだ。性に飢えた女豹が涎を垂らしてかぶり付きそうな肉の臭い、もとい、雄の香ばしい臭いがジュ~っと目に見えない蒸気を発してるのではないかと云うぐらい、存在感を醸し出していた。

まずは両手にボディペーパーを持ち、太ももを攻めていく。特に内ももを重点的に拭きあげる。リンパを刺激しつつ、気化熱により産み出されたフローラルのそよ風がイソギンチャクの真下にある2つのウニへと送られる。ヒュンとウニがそよ風に反応し、ピキピキと皺を寄せ縮こまっていく。何しろ、二枚のボディペーパーを両手でゴシゴシと拭いているのだから、破壊力は上半身の2倍なのである。二刀流、いや二丁拳銃といったところか。さしずめ、マカロニ・ウェスタンの気分だ。ちなみに、ジャンゴのように狙撃のセンスはない。

荒野の用心棒はムクムクと成長を遂げる。西部劇に出てくるサボテンのように大きく成長したそれは、ピンク色の花を咲かし、更に刺激臭を放つ。フローラルと汗、その他もろもろを混ぜ合わせた闇鍋のような集大成。長距離移動のため、2~3日は風呂に入れないことが多い。その為もあるのか、更に強烈な臭いを放つ攻撃性が強調されていた。

太ももを拭き終わり、標的がサボテンへと向かう。ヒューーとぬるい風がカーテンの隙間から入り、右から左へ全身を受け流す。西部劇の打ち合いの瞬間、向き合った時に待ち受けるのは生か、死か、もしくは相討ちか。躊躇いは許されない。作業は一瞬で終わらせないといけない。いざ、勝負。

両手のペーパーでサボテンをガッシリと掴む。ピンク色の花をセンターに、上から真下へ。2つのウニまで上下に素早く、テキパキと撫で回す。北斗百烈拳を無言でアタタタタと叩き込み、作業は終盤へ。メンソールでテカテカに光るサボテンの花を丁寧、丁寧、丁寧に拭き上がり、命が潰えた二枚の救世主は異臭を放つティッシュへと成り下がり、ゴミ袋へダンクする。あまりの臭さに扱いが雑になってしまうほどである。

果てしない闘いが終わり、ほっとしたのも束の間、股間に違和感を感じる。塗りたくられたメンソールがブラックホールのように気化を始める。二枚のボディペーパーが合わさることにより、通常の威力が2倍となる。また、股間の敏感力は顔面の2倍。すなわち、4倍の破壊力を備えた気化熱が、人体で最も敏感な部分である一ヶ所に集中攻撃を放つというものである。

そして、時は加速する。

メイドインヘヴンが世界を何巡するかのような勢いで、太陽のような灼熱の炎を宿した痛みが股間へと叩きつける。声が出ないほどの痛さ。千切りたくなるような痛さ。もはや、気持ちいいを通り越した別な世界線に意識が飛んでいきそうなぐらいの痛さ。しかし、人間は変な生き物である。その痛みが逆に気持ちいいと、思ってしまえるぐらい幸せな生き物なのだから。

ビキビキと急成長を遂げる股間と共に、腹の底から沸き上がってくる感情が同時に一斉発射された。

「たいよううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(CV. 大塚明夫)」

 

 

怒張したサボテンは白い薔薇と変わり、やがて小さく萎んでいった。百年に1度だけ咲く竹の花のように。盛者必衰。しかし、潔く散っていく清々しさはどこか、美しい花火のようだった。

 

 

ぬるい風が吹き渡り、石のように固くなった男がポツンと下半身丸出しでうずくまっていた。不老不死の体を手に入れたが、死にたいも思っても死ねないので、考えるのを辞めた柱の男のようだった。

 

「太陽と共にあらんことを」

 

昔、ゲームでプレイしていたキャラがこう言っていたのを覚えている。そんな太陽は、更にムシムシと湿度を増して焼け殺す勢いで温度を上げていった。

 

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1件のコメント

  1. ブルルは、セクハラという概念が存在しなかった昭和のサイトですね。
    おっさんドライバーには有り難いんで、このままブレずに続けていってもらえれば・・・・

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