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橋本愛喜にも言わせて
【第12回】昨今の運送業界で聞かれる排外主義について
2025年8月18日 New
こんにちは、橋本です(´-ω-`)(´-ω-`)
こちらの連載、
書かねばならないタイミングをまたしても大きく逸し、
運営各位&読者各位に合わせる顔も
言い訳する言葉も見つからない今日この頃ですが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回の投稿でも同じことを言っています。
あまりに同じすぎたので
コピペして「ごめんなさい」の感情3割増にして
お伝えしてる次第です(恥)
忙しかったと言ってしまえばそれまでなんですが、
本音を言うと、少し疲れていました。
国や組織、現場の経営者・労働者に対して、
どれだけ言っても変わろうとしない「やるせなさ」
を感じていたというのもあったんですが、
何よりも
昨今の社会における排外主義的潮流にとまどい、
非常に大きな虚無感を覚えていました。
運送業界から聞かれる排外主義
ご存じの通り、
私はブルーカラーの現場にある問題
を中心に書いているライターです。
自分が生きてきたなかで
最も楽しかった仕事が
トラックに乗ることだったこと、
そして、
現役当時よくしてくれていた
多くのトラックドライバーが
劣悪な労働環境に悩んでいたこともあり、
その恩返しという意味でも
今まで運送業界やトラックドライバー目線で
書いてきました。
トラックドライバーの働き方、
ひいては
生活そのものがよりよくなってほしい
という思いで活動をしています。
こうして運送業界を書いてきた手前、
昨今の排外主義においても、
日本全体の傾向だけでなく
運送業界の動向を注視していたんですが、
自分が想像していた以上に
これまで交流してきていた一部のドライバーや経営者が
突然、悪びれる様子もなく
排外主義的な発言をし始めるのが非常に辛かった。
「外人は能力が低い」
「ゴキブリ害人め」
こんな言葉を
なんの罪悪感もなくスルスルと吐き出す
運送業界関係者のツイートを目にするようになり、
「カッコ悪…」
と心底思いながら、
その「俺もなんかひと言いわせてくれ」とする
これまた非常にカッコ悪い後乗りが
伝播していく様子を見ていました。自分たち自身
「底辺だ」「あんなのバカがする仕事だ」と差別され、「金持ちファースト」
「荷主ファースト」の被害者にされ、
虐げられる人の痛みを
身をもって知っているにもかかわらず、
なんでそれを他の属性に平気でできるのか。
「自分がされて嫌なことは人にするな」、
と育てられた私には、
全く理解できず、
国内外で様々な差別に対峙してきた身として、
その身勝手さに非常に苦しみました。
連載ができずにいた間、
外国人労働者に関する講演会後の懇親会で、
特定の外国人に対して平気でヘイトをぶちまける役員と
地獄の時間を過ごしたり。
業界関係者(応援者)との対談で
昨今の排外主義に流された対談相手が
「外国人、すぐ無断欠勤するでしょ」
と笑いながら言っている姿を目の当たりにしたり。
海外経験の長い私には、そんな彼らが
無知識で無教養で、愚かで哀れに映ったんです。
トラックドライバーたち、よく言いますよね。
「経験してないやつらが口を出すな」と。
あなたたち外国人を差別する人たちのなかに、
外国に住んだことがある人、
いや、外国人の友達がいる人、
いいや、外国人とまともに話したことがある人は
どのくらいいるんですか。
この人らは、自分の無知を棚に上げ、
今どんな人権侵害をしているか
全く気付いていないと、絶望してしまった。
これだけ視野が狭く社会的知識のない人と、
なんで肩並べて仕事せなあかんのか、と。
それで、自分の心と大切な人たちを守るために
他業種や社会に関するインプットを多めにしながら、
運送における情報の出し入れは極力抑えていた次第です。
こうして外枠から見つめ直す時間を作った結果、
この業界に必要なことは、
これまでにもずっと痛感してきたとおり、
「トラックドライバー目線」だけではなく、
俯瞰的な視点(マクロの目線)
が何より重要だと再認識しました。
マナーが悪いのは外国人だけではない
先にも触れた通り、
「外国人のマナーがなっていない」
「日本人はマナーや倫理観が備わっている」
と言う運送業界者を、SNSで多く見かけます。
確かに、日本人は
日本においてマナーがいい人が多いのかもしれません。
が、
それは「日本人全員」と言えるんでしょうか。
2025年8月現在、
トラックドライバーのほとんどは日本人ですが、
SAPAや物流センターに山のように捨てられているごみは
どう説明するんでしょう。
これも全部「外国人のせい」なんでしょうか。
トラックのポイ捨てが問題視される際、
業界から聞こえてくるのは
「ごく一部のマナー違反ドライバーのせいで業界全体の印象が悪くなる」
という声です。
分かっているじゃないですか。
そうです、ごく一部の外国人のマナー違反を
すべての外国人にヘイトを向けることが
いかに愚かなことなのか、
分かってるじゃないですか。
私が差別に対して敏感なのは
外国人に対してだけではありません。
性別、学歴、年齢、宗教
すべてにおいて、〇〇だからこうなんだ、
という決めつけや差別は、
現場や未来に大きな誤解と歪みを生みます。
こうした論をエスカレートさせ、
「犯罪やモラル違反の犯人も全部外国人」
のせいにする言説が飛び交うようになっていますが、
こうしたねじ曲がった論の進行が
やがて大虐殺を生む。
非常に危険だと感じています。
そんな大げさな、
と言う人もいるかもしれませんが、
言論やイデオロギーに翻弄され
命を落とした人たちの歴史の現場を
歩き尋ねていると、
無学の人たちが勝手に抱く不安や誤解によって
人は本当に死に追いやられると
改めて感じます。
それは、規模は違えど、実際現代社会でも
「いじめ」として起きていることも忘れてはいけません。
ある政党が言い始めた「日本人ファースト」ですが、
なかには力強く、胸に響いたという人もいるでしょう。
ただ、こうした
「その属性にいなければ優先権がない」とする考え方は、
やがて自分自身の首を強く締めることになると
気付いてほしいんです。
「日本人ファースト」という
「属性に優先順位を付ける論」を一度でも肯定すれば、
それはやがて先の
「カネ持ちファースト」「荷主ファースト」
を自ら肯定することになる。
「〇〇(人間属性)ファースト」の肯定は、
弱者を切っていく免罪符でしかありません。
それに、それら属性における差別には
肯定に足る一切の整合性もエビデンスもない。
「いや、ある」と豪語する人にそれを提示させると
やれ「YouTube」だの「〇〇さん(知識のない政治家)」だの、
陰謀論や絵本の範疇を脱しないレベル。
こうした「〇〇ファースト」を持ち出す政治は、
これまで政治に興味がなかったけど、
なんとなく社会に不満を抱いていた「政治弱者」に
火を焚きつける完全なプロパガンダであり、
その政治弱者こそ、
次なる「トカゲのしっぽ」だと気付いたほうがいい。
なかには、歴史的・統計的事実よりも
自分の理想に近い
ハッピーエンドの絵本レベルの陰謀論
を信じようとする情報弱者の方も散見されますが、
いいですか、
「過去本当にあったこと」よりも
「自分が信じたいもの」を真実とするのは、
卑怯者と腰抜けがすることです。
マジで
世界で一番カッコ悪い
ここ数か月、
こういう人たち、
こういう運送業界の人に出くわすことが多く、
自分の中で受け止められずに
心がすこし疲れていました。
こんなヤツのためになんで活動してんだ、私。
と、思うようになってしまってたんですね。
書き続ける3つの理由
それでも自分がまだ「書かねば」と思うのは、
3つあります。
1つは、仕事だからです。
ここ数か月の間、
差別を捨て台詞に去っていく人が少なくありませんでした。
これまでの論をtwitterに投稿すると、
今まで色んな話を聞かせてくれたドライバーのなかには、
「この左翼アマめ」
と言い残して去って行った人もいましたが、
私は、あかんことをあかんというのが仕事です。
そもそも、
「弱い者いじめをするな」
「ウソをつくな」
「もっと事実を学べ」
という至極真っ当なことを言うのが「左翼」
であるならば、
彼らが思う「右翼」というのは
どれだけのならず者なんですか。
私は、ここでも何度も言っているように、
上下左右、裏表、男女、関係なく是々非々で話します。
権力にも屈しなければ、
弱者の言う間違ったことにも「それは違う」と
真正面から指摘します。
ゆえに、真っ当なことを言うだけで
勝手に「左翼」などと決めつけてくるドライバーには、
道のプロのくせに右も左も分からんのか
と思っています。
こう言ってくる人のほとんどは、
外国人と話をしたこともない視野の狭い人たちです。
今後、この業界にも
多くの外国人ドライバーがやって来ることに鑑みても
「(どんな属性に対しても)差別をやめろ」
と言葉にするのが私の仕事なので
今後も引き続き、粛々と自分の正義を貫かねばと思っています。
2つ目は、
「沈黙のらせん」を起こしてはいけないという使命感です。
正直、このしがらみの多い業界では
「それは違う」と言える人は非常に少ないです。
一方、
私はただの「フリーライター」ですし、
干されてプータローになっても
一応生きていける状態なので、怖いものがない。
この業界をわざわざ書かずとも、
そして、権力を恐れずとも生きていける立場です。
つまるところ、
この業界、ひいてはこの社会に対して
忖度なく、是々非々で問題提起できる
数少ない人間だと自認しています。
ちなみに
よく「ネガティブなことばっか言うな」
というコメントをいただきますが、
YouTubeやtwitterで
楽しく酒を飲んだり、
1日の生活の様子を映したりすることを
私は「ポジティブ」だとは1mmも思っていません。
酒投稿やハッピー投稿では
世の中を和ませることはできても
絶対に成長しません。
どんなものにおいても、
成長の源泉は「批判」です。
本当の「ネガティブ」というのは
「何も指摘・批判せず黙っていること」です。
この業界のことをどうも思っていなければ、
あかん部分があっても黙っていればいいんです。
黙ってれば勝手に腐り崩壊するわけなので。
私は第三者の中で、
この業界を恐らく誰よりも憂いているうちの1人
だと思っています。
この業界の発展のためにも、
書き続けないといけないと強く思っています。
そして最後にして最大の理由は、
応援してくれている読者や業界関係者の存在です。
ほんまは私が応援しないといけないんですが、
ありがたいことに、こういう私にも
「応援してます。変なのいるけどこの業界のために頑張ってください」
という声が多くあります。
これまでもたくさんいただいていたが、
ここ数か月にいただいた「応援しています」は、
すさんだ心に深く沁みました。
各位、ほんまありがとうございますな!
そして、今はまだ
自分たちの考えや発言の異常さに気付かない人たちが、
やがて自分が被害者になった時、
駆け込める場所がないと困る。
そのためにも、
運送業界について書き続けていなければと思います。
こうした活動に対して
「偽善者ぶるな」と過去に言われたことがありますが、
実際ある日、
死亡事故を起こし、会社からも家庭からも見放され
どん底に落ちて声を掛けてきたドライバーの
相談・支援をしたことがあります。
他でもない「偽善者ぶるな」と言ってきた張本人です。
私のゴールは、主義主張を貫き通すことではありません。
セーフティネットとして、
誰かが過去の自分のようにどん底に落ちた時のための
セーフティネットになっていたい。
そのためには、
今どんなに荒くれ差別をぶちまけ、
何の罪もない人を蔑む相手でも
「ああ、この人はまだ気づいてないだけなんだな」
と許さないといけない。
これは、私にとって非常に非常にしんどい作業です。
が、自分が生きてきた道を改めて振り返ると、
これが自分の使命なんだろうなと。
そういう思いで今後も活動を続ける所存です。
ゆえに今後もめちゃくちゃねちっこく
現場取材、頑張りますで、ひとつよろしゅうな(´-ω-`)
長くなりましたが、
いつか差別をする人たちにも分かってもらえる日が来ることを
信じています。
※これまで空いた分、しばらくは書ける範囲で
月2本くらい頑張れたら
(あんま信用せんでください)
かしこ
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プロフィール
橋本愛喜
フリーライター。
元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで二百社以上のモノづくりの現場を訪問。
ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。
各メディア出演や全国での講演活動も行う。 -
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