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  • 配車女子 とら子の「一配一会」

    バブル期の“大ハッタリ”が生んだ悲劇。 運送業が今こそ断ち切るべき商慣習とは

    2025年11月30日 New

     
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    新トラック法や取適法など、運送業にとってプラスになる法改正が進んでいます。   ルールが変われば運送業がよくなる。   そう思いたいのは山々ですが、実際の運送業は古から根付く商慣習によってルールが変わったからといってそうすぐには変われないのが現実です。     私が思う、最悪の商習慣が「当日発注・翌日納品」です。    

    「当日発注(受注)・翌日納品」のはいつから始まったのか?

      現在の運送業を疲弊させている「当日発注・翌日納品」の商慣習は高度経済成長期からバブル期にかけて卸売業(問屋)が中心となって築き上げられた、と言われています。     そしてこの商慣習は日本独自の「流通の仕組み」に根を広げていきます。       まずはこの商慣習が定着した背景と歴史をまとめてみました。    

    ①創成期:高度経済成長期(1950年代〜1970年代)

      【時代背景】   ・日本は戦後復興の真っ只中   ・日本各地に零細な小売店が数多く散在している   ・メーカーは点在する小売店に直接商品を届けるのは非効率だと思っていた   ・このメーカーと小売店の流通問題を問屋が解決に導いていく     ★問屋の役割★   ・メーカーから数百以上の小売店へ商品を送る代わりに問屋が一旦大量に仕入れる     ・仕入れた商品は問屋が自社倉庫に入れる(在庫制度の始まり)     ・小売店は問屋の自社倉庫にある在庫から必要な分だけを少量ずつ購入する(小口多頻度配送の始まり)     ・小売店は在庫リスクを負わないメリットが生まれる→問屋のサービスは拡大していく    

    ②定着期:バブル期と物流2法の制定(1980年代後半〜1990年代初頭)

      【時代背景】   ・1990年に「物流2法」が制定され、新規の運送事業者が爆増。物流業界内での競争が一気に加速する。   ・バブル崩壊後の景気減速により、モノが売れなくなり、荷物の奪い合いが多発→運賃ダンピングの横行     ★物流2法による過剰サービスの定着★   ・運送事業者は荷主であるメーカーや問屋との取引を確保するために運賃を安くするだけではなく、「サービスの質」で差別化を求められるようになる。   ・「サービスの質」の最たるものが「今日発注すれば、遠方でも翌日には必ず納品する」というリードタイムの極端な短縮   ・運賃を下げるだけでは選ばれない時代に「サービスとしての翌日納品」は運送事業者のみならずメーカーや問屋にも定着    

    ③問題顕在期:インターネット普及と流通革命(2000年代以降)

      【時代背景】   ・在庫を持たない経営(ジャストインタイム)の代表格、コンビニ、ドラッグストアの拡大   ・店舗は「売れたら発注」を徹底し、問屋、メーカー側には「欠品を防ぐため、どんな急な注文でも翌日に届ける体制」を求めるようになる   ・在庫を持たない経営型店舗の増加により「当日発注・翌日納品」は競争の優位性や差別化ではなく「ビジネス上の最低条件」へ変貌する     ★現在の問題★   ・「当日発注・翌日納品」を実現するためのコストが運賃に適正に反映されていない期間が30年以上継続している   ・その結果、運送業界の利益率が低下し、ドライバーの労働環境悪化と成り手不足を招く   ・2024年問題として顕在化    

    「当日発注・翌日納品」で苦しむのは運送業界の自業自得なのか

      歴史をまとめてみると、   運送事業者が運賃を安くするだけでは選べれないと危機感を募った結果、   「どこでも翌日納品しましょう!」と大風呂敷を広げたのはいいものの、   そのためのコスト計算もせず、仕事を確保するために提案をした。と思わずにはいられません。     ここまでで「なんで過去の運送事業者がやらかしたことの責任を取らなければならないんだ!」と憤る方もおられるでしょう。     私も書いてイライラしてきました。     あんたらのせいで今大変なことになっとんやぞ、と。     バブル景気で運送会社で働いていれば、トラックに乗っていれば1000万円以上の年収が稼げた時代の人たちが     大風呂敷を勝手に広げて     自分たちの時代さえ良ければいい、自分だちの時代しか見えていない状態で     ビジネス的戦略も持たずにしてきた結果が今じゃないか、と。     だけど、その時代の人たちがいたからこそ今でも日本の運送業は世界でもトップクラスに品質が良いと言われている。     世界で初めて「当日発注・翌日納品」を実現した日本の運送業は世界でトップクラスに上り詰めた。     敗戦国だった国が彼らが作り上げた物流を武器に高度に経済を発展させた。     これは揺るぎない事実。     あの時の大風呂敷がなかったら今の日本はなかった。     ビジネスには時にハッタリが必要。     この運送業真冬時代を生きる私が冷静に考えてもあの時の大風呂敷はビジネスで言う「大ハッタリ」だったと思うんです。    

    「当日発注・翌日納品」の呪縛を解く

      2024年問題に直面し、次は2030年問題と言われる「問題山積みな運送業」がしなければいけないことは     「当日発注・翌日納品」の呪縛から自分たちを解放することです。     そのために必要なことは     「翌日納品」への適正な対価がいくら必要なのか計算すること。   計算して出た金額をメーカーや問屋であるお客様に適正に請求すること。     そもそも呪縛って何やねん?と考えた時、     私たち運送業の呪縛は「適正に運賃をもらえていない」事実なんです。     世の中の大抵のことは「お金」で解決できる、と言われているのに運送業はお金が足りていない。     だから人が雇えないし、給料の魅力がないから人も集まらない。     そのお金をしっかりもらうことがまずは最優先。     そして、最優先である適正な対価を請求する勇気を持つこと。     適正な対価を請求する勇気は覚悟でもあります。     これから5年更新制が始まれば「適正原価を継続的に下回らない」ことが判断されます。     つまり、お客様に適正な対価を請求しなければ事業免許が剥奪される可能性も示唆されているのです。     お客様に請求する覚悟か事業継続を諦める覚悟かどちらかを選ぶ岐路に立たされることになる。     古い商慣習からの呪縛を断つのは自分自身でしかないのです。    

    まとめ

      古くから根付く商習慣を変えることは非常に難易度が高い。     何かを変えたいと思う時、     一番簡単な方法は     まず自分が変わることです。     苦しいかもしれないけど必要な対価(適正な対価)を請求することも大きな変化だと思っています。     例えば、急ぎの依頼があった場合の追加料金を契約書面上で設定する、     1週間のリードタイム設定をお客様と一緒に考える機会を設ける、でもいい。     まずはこちらからアクションを起こすことが運送業の変化だと思っています。     冒頭で挙げた新トラック法や取適法によって外部からの変革はこれから期待ができるはずですが、商習慣という内部の呪縛を断つためには運送業が主体となって   対価の請求という行動を起こす必要があります。     今、運送業はその良いタイミングにあると思っています。     確かにお客様には嫌な顔はされるし仕事は無くなるかもしれない。     だけど会社があって働いてくれる人がいればきっと新しい仕事を見つけることはできる。     今までと違う仕事だってやればいい。     適正な対価を支払ってくれる事業に変えたっていい。     変えたいと思っても相手は絶対に変わらない。   だから自分を変えるしかない。     今からだって遅くはない。     まず運送業から変わっていきましょう。
     
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