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2025年11月の最新投稿運輸局に聞いてきた!新トラック法はこうなる!
2025年11月19日 New
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今日、近畿運輸局の貨物課長に、新トラック法の実務的な運用について直接お話を聞く機会をいただきました。 この記事ではその内容をできるだけわかりやすく整理して共有します。
登場する法律をおさらい
①新トラック法・・・改正貨物自動車運送事業法のこと。トラック運送業が抱える長時間労働やドライバー不足といった課題に対して、業界構造の改革とドライバーの待遇改善を目的とする法律です ②中小受託取引適正化法・・・旧下請法です。施行は2026年1月1日から。新しい法律になって運送業も対象取引となります。
利用運送手数料は「運賃の10%を毎依頼ごとに別建て」が国の正式方針
まず、大きなポイントは、利用運送手数料は運賃とは別建てで、運賃の10%を毎回依頼元から受け取ってくださいという国の認識が明確であることです。 これはどういうことか、というと 利用運送をするときは、今までは運賃から手数料を引いていたけど、これからは運賃とは別で手数料をもらってくださいね。 もらうときは運賃の10%をもらってね、ということです。 具体的に言えば、 荷主12万円で運送依頼→A社10万円で運送依頼→B社95000円で運送依頼→C社が実運送 としていた流れを 荷主12万円で運送依頼→A社11万円で運送依頼(荷主から12,000円を手数料として収受)→B社10万円で運送依頼(荷主から11,000円を手数料として収受)→C社が10万円で実運送 にしますよ、ということです。 つまり、 荷主=実運送までに事業者が2社入れば、10%×2社分の手数料を支払わなければいけない 利用運送をする事業者=実際に実運送まで何社入るかわかるまでは手数料が確定しないため、手数料は事後請求で伝えて請求する ポカン。 今日ね、専務と一緒にお話を聞きに行ったわけですが我々2人マジポカンなんすよ。 それを見た課長が 「これは机上の空論ですけどね」とおっしゃってはいたんですけども。 ただ、ルールとしてはこれが正当ですよ、というのが新トラック法の中の利用運送手数料の扱いなんです。 荷主としても何%手数料がかかるかわからない物流費を容認するとは到底思えず、制度と現場のギャップは大きい。 地に足についてないやないか!!と言われそうなんですが ここは国がウルトラCを用意してるんですね。 それが【中小受託取引適正化法(取適法)】です。 2026年1月1日、正月真っ只中に施行されるこの法律は元・下請法です。 実は下請法で規制される対象取引には「運送業」の多くは含まれていなかったんです。 我々運送業を守ってくれていた法律は ・貨物運送事業者事業法 ・独占禁止法 の2つしかなく、国が荷主や元請けに取引自体を直接是正勧告や命令ができる法律がなかったんです。 話が逸れましたが、この中小受託取引適正化法(取適法)によって手数料の事後払いを担保しようじゃねえかい!というのが国の思惑なんだろうなと私は思っています。 どういうことかというと、 利用運送手数料は国が「必ず別建てで取りなさい」と明言している正当な対価です。 でも、実際の現場では 「最初に金額が決まっていないなら払わない」 「そんな請求聞いてない」 「うちは包括契約だから追加料金は認めない」 という荷主・元請け側の典型的な拒否理由が絶対に出てきます。 ここで効いてくるのが中小受託取引適正化法の「不当な報酬未払いの禁止」です。 つまり、 国が必要だといっている正当な手数料(利用運送手数料)を、 事後であっても払わない場合、法的には未払いの不当行為に該当する可能性が高い ということです。 課長が「机上の空論」と言った背景には 法律はそうでも、実務で請求できるかは別問題だからです。 ・荷主は「どの会社が実運送まで入ったのか」を理解できない ・契約上、「包括契約」「一括契約」が多く、別建て請求に合意しない ・実運送までに数社挟むため、手数料通知に時間がかかる など、現実の商慣行では運用不能に近いわけです。 課長の発言の裏には「制度が悪い」のではなく。 物流商慣行、商慣習が制度に全く追いついていない、という現実的な指摘があったのではないかと私は考え直しました。 マジポカンちゃうで、私。しっかりせえよ。 とまぁ、来年施行の取適法によって運送業は守られる取引となりました。 つまり、 利用運送手数料は 新トラック法で「正当な対価」と認められ、 取適法で事後払いも担保されるべき対価であるということが認められているということです。 ただ、これは課長も言っていましたが、 運送契約の書面化が必須、となりますので契約書にしっかり明記することがとっても重要になります。
5年更新制度
もう1つの大きな変化が運送業の「5年更新制」です。 今日分かったのは ①更新審査の基準案は国土交通省本章で現在議論中 ②審査はトラック協会ではなく、新設される独立行政法人が実施 ③審査は独立行政法人が行うが、許可を下すのは運輸局 ④適正原価の継続性が審査基準の1つに含まれる可能性が高い という4つのことです。 トラック協会の巡回指導の人たちが審査するわけではなく、完全に独立した機関が審査を行うため、 かなりシビアな仕組みになると思われます。 ④について少し説明をしますね。 新トラック法において トラック運送事業者は、自らの貨物を運ぶときや他の事業者に運送を委託するときは、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回らないことを確保 という記載があります。 私はこの文章の中でめっちゃ気になるところがあったので質問しました。 それは 「継続して下回らないこと」 という部分です。 これはどういう意味ですか?と聞いたところ、課長が説明してくれました。 「継続して下回らない、というのは5年更新の審査基準になると思います。どういうことかというと、1つの運行において実運送が収受する運賃が適正原価であるだけではなく、次の更新までの期間継続して適正原価を下回る取引をしてはいけない、ということです」 つまり、 適正原価は運送取引一つ一つにおいて下回ってはいけないし、 更新までの期間についても全て確認されて下回っていないかを確認される、ということです。 どちらが審査基準になるのかはまだ不明のようですが、期間を総合して下回らないような取引が運送業に求められています。 今でもまだ、運送会社が荷主からもらった運賃から多額の手数料を差し引いて実運送に依頼する、という悪しき風習が残っていますが 2028年以降、そういう取引をしている事業者は更新審査通りません。 運賃を不当に下げる行為は悪、と認識される時代がきます。 まだそんなことやってる事業者ははよやめたほうがいいです。
適正原価とは?
適正原価も今国がその額を議論している最中ではありますが、 この適正原価とは誰に対しての適正原価なのかも聞いてみました。 新トラック法においては、荷主は適正原価を支払う義務があり、運送会社は適正原価を収受する義務があると記載されています。 いやいや、どっちやねん。 という超基本的な質問をドヤ顔でしたわけですが課長は優しく教えてくれました。 適正原価は実運送事業者が収受すべき運賃のことです。と。 つまり、荷主は実運送事業者には適正原価を運賃として支払い、実運送事業者までの事業者には利用手数料を支払う義務があるということです。 最初の内容に合致しますよね。 適正原価を支払う義務、収受する義務は実際に荷物を出す、運ぶ業者に課せられていて、 間に入ってチャリンチャリンビジネスする事業者は手数料を別でもらいなさい、ということです。
まとめ
今回、課長の話を直接聞いて強く感じたのは ・法律の理想と現場の実務の間には埋まらない溝がまだかなりたくさんある ・特に利用運送手数料は現場で運用するにはまだまだ時間がかかりそう ・適正原価の「継続性」は5年更新に直結する重い基準になる ・5年更新はガチ審査でやろうとする国の強い意志を感じられるやで ということ。 正直、制度や法律そのものが現実に追いついていない部分も見えましたが、「今後の運送業界の流れを決める制度」なのは間違いない、ということです。 現場としてどう動くべきなのか、これからも情報を集めて発信していきます。
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プロフィール

とら子
トラック運転できないAT限定免許配車マン。
トラックは街の風景だと思って過ごしてきた学生時代。 けど今はドライバーさんのおかげでご飯食べれています。
配車はドライバーさんと荷主の緩衝材。 目の前の利益より損して得取れ精神で配車係やらせてもらってます。 -
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