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配車女子 とら子の「一配一会」
物流を振り返ったら奴がいた件
2024年4月9日 とら子独り言
2024年問題が始まるとされる4月1日も軽々と過ぎて行き、気づけばもう8日も経っています。 ごきげんよう、皆様お元気でしょうか。 荷物が少ないことはこの時期とてもよくある話ではありますが、やはり2024年4月1日以降という分岐点以降、物量が減ればどうしても心もとなくなります。 長距離運行ができる会社が減り、バラ積みができない会社も増えてくる。 今までの運送業の姿が変わっていくかもしれない過渡期。 新しいモノやコトが沢山入ってくる時代になりつつありますが、ここで昔からの日本の物流をちょっと振り返り、今ある運送業がどのように作られてきたのかを知る時間があってもいいんじゃないかなと思い、先日とある本を購入しました。あまりにも面白すぎてXでも度々ポストしていますwww こちらはJPRを設立され、アジア物流の父と呼ばれた「平原直」さんが書かれたものを編集した本です。 この本には古墳時代の荷役から現代の荷役まで様々な荷役について書かれています。 その中でも私が特に興味を持ったものだけを抽出して今回は書いていこうと思います。
世界に誇る悲しき日本の荷役~天狗取り荷役~
天狗取り荷役とは北九州~長崎にかけて盛んにおこなわれていた荷役です。 この荷役が盛んにおこなわれていたのは明治時代。 日露戦争前で物流にも近代化の波が押し寄せてきたころです。 蒸気船によって運ぶ荷物の量もかなり大きくなってきました。 そして、その蒸気船は「石炭」が動力。 蒸気船への迅速な燃料補給のために当時考えられたのが「天狗取り荷役」でした。 天狗取り荷役とはシンプルに言えば「人間ベルトコンベア」です。このように船が港に到着したら一斉にハシゴをかけて下から石炭が入ったバケツをリレーします。 各港には仲仕組と呼ばれる組があって、写真のハシゴも組ごとに分かれていました。 作業員さんたちは自分の組の親方のメンツのために誰よりも早く船にハシゴをかけて船の上に一番乗りをすることをステータスとしていたようです。 命がけの作業であったことは間違いありません。 この天狗取り荷役は長崎で最も隆盛を極め、イギリスの新聞にも掲載されたほどでした。 それほどにこの荷役における荷役効率は当時の機械よりも優れていて、日露戦争で日本が勝利したのもこの荷役による迅速な石炭補給が要因とまで言われています。 それくらい早かった、ということだと思います。 また、この荷役を行っていた作業員さんは主に女性でした。 すごすぎる・・・。 ですが、ここでこの平原さんが書いた別の記述もあるのでご紹介します。
これは、平原さんが創刊していた「荷役と機械」という雑誌の1面です。 ここで平原さんは世界的に有名になった天狗取り荷役についてこのように書いています。
「日本人の好きな戦術の一つに肉弾戦というのがある。人間が爆弾を抱いて鉄条網の中に飛び込み、自ら操縦する飛行機を敵艦に体当たりさせる。アメリカ人からこれを見れば、人間が人間としての権利と人格を放棄して、一箇の物質に身を落とす、バカ気た戦法であるが、日本では人間が神となる、最も神聖且つ勇敢な行為で、肉弾で身をささげた人は神としてまつられる。」
「天狗取り荷役は、汽船経営の近代化に、日本人が毅然として(?)立ち向かった、日本人の体当たり戦法の一つである。船舶が木造の補選から、蒸気力を動力とした鉄製の汽船に近代化されると、その荷役もそれに対応して、機械化荷役で立ち向かわねばならなかったのであるが、悲しいかな機械力を持たなかった(或は機械力を無視したといった方が、当たっているかもわからないが)日本の荷役業者は、我と我身を一箇の機械と化し、人間機械となって、その近代化へのおくれの辻褄を合わせたのであった。天狗取り荷役に、われわれは日本的荷役の真骨頂を見、また一面貧乏と封建的遺風と人口過多にあえいでいる日本の運命の矛盾と悲哀をつくづく感じさせられる。」
大国ロシアに勝利したあの戦争で日本を支えていたのは体当たりの動力補給であり、その後の世界大戦で見せた日本的戦法に根付く日本的なアイデンティティが荷役にまで及んでいたという考察を平原さんは書かれています。蒸気船というものは当時の近代化の象徴。 その蒸気船を支えているのが体当たりの荷役。 近代化と原始的な荷役の矛盾を解消しなければいけない、という考察もされています。(1953年「生産と電気」) ただ、私は本でこの荷役を知って「めっちゃかっこええ!!」って思いました。 船が港に寄港したら「おりゃーーー!!」って言いながらハシゴかけて下から重たい荷物をバケツリレーしてその結果、世界にとどろく荷役になったわけですから。 日本人の知恵ってすごいなぁとしみじみ思いましたね。 俗にいう、竹槍戦法なんでしょうがこれはこれで世界に名前をとどろかせた一流の荷役と言っていいと思います。
飛脚から通運へ、そして現代のカタチへ
Xでポストもさせていただいたんですが、日本の運送業の始まりを作ったのは飛脚問屋の番頭さんだった佐々木荘助という人物です。(上の写真の方) 明治維新の頃、国が飛脚問屋の仕事である「手紙の輸送」を「郵便」に変えて国の事業として行う!と強行したために飛脚問屋との間で何度も交渉が行われました。 その時に飛脚側の代表者として佐々木荘助さんという方が交渉に立ち、郵便の父と言われた前島密の暗殺も試みようとしますが前島さんの説得に感服、感銘し、前島さんが完全バックアップする形で「通運会社」を作ることになったのです。 日本で初めての運送会社、「陸運元会社」のスタートです。 この会社は今の日本通運さんの前身だそうです。日通さんってやっぱり歴史が深すぎる・・・すごいなぁ。 佐々木さんが飛脚時代に作り上げた通運網、というのが当時の陸運元会社、そして現在の運送業の元になるわけですがそこで平原さんが書いた一文がとても染みたので紹介します。
通運(運送)を支えているものは、権力でもなければ、ひとにぎりの経営陣の力でもない。ましてや資本などという金の力でもない。 それらはあまりにも有限であり、刹那的である。 無限大の可能性と永遠性を秘めた、網状の実態組織(運送網)の力には及ぶべくもない。
この考えは今も昔も変わらないのではないかな、と私は思っていて やはり網状に張り巡らされた個々の継続した現場の力にはいかなるものも敵わないと思うのです。 なんだろう、現場が最高にかっこいいじゃん!みたいなね。 現場で物流まわしてるんだぜ!的なねw そういう思いは持ち続けていいしこれからも大事にしていこうと思えた一文でした。今も昔も変わらない課題
1955年創刊の『荷役と機械』で興味深い記事を見つけました。(仕事せえ)
ざっくりまとめると、 1955年の記事時点で「トラックは稼働させておかないと収益を生まない。トラックは機械だからドライバーさえ変えれば24時間でも稼働はできる。だけど、実際に動いている時間は24時間のうち15分の1に足りない」とあります。 24時間稼働させる、っていうのが高度経済成長期スタートの年の考えっぽくて好きw で、できるだけトラックが止まっている時間を少なくするためにどうしたらいいか考えた結果、最善は 貨物の積み下ろしのために車を止めている間で何とかするしかない。(できるだけ時間短縮するしかない) という結論。 ちょっと待ってwww これ、めちゃくちゃ今も同じ状況やんwwww 平原さんがすごいのは「おっしゃ、ほんなら積み下ろしの時間短くするためにパレット作ろう。そのパレットもサイズがバラバラじゃあかん。全部同じサイズにせなあかん!」 ということで同一サイズのパレットを作って(これがJPRの始まり)積み下ろしの時間短縮のために動いた、っていうことなんですよね。 平原さんの自論で 貨幣経済において色んなところから別々にお金が刷られたら社会は大混乱になる。 交換経済での貨幣はパレットである。色んなところから大小さまざまなサイズのパレットでは混乱を招く。だからパレットは同一規格にするべき。 というものがあるんですが、確かにその通りだなと。 2024年問題だー!大変だー! って言うのは簡単。でも2024年問題の本質的な課題は「労働時間の短縮」であり「働きやすい職場環境の整備」なんですよね。 ちょうど69年前に出された業界の宿題を誰も解いてなかっただけな気がしています。 69年前に出された宿題は「どうすれば稼働率を上げられるか」だけど多角的に見れば「どうすれば荷卸し時間を短縮できるか」→「労働時間を短くできるか」でもあると思います。 当時、同一サイズのパレット化というヒントまであったのにどうしてそれが普及しなかったのか、というところもちゃんと丁寧に考えていければ過去から学ぶことも沢山あるんじゃないかなと考えています。 このタイミングでこの本に出会えたこともやっぱり何かの縁だろうし歴史がわかることで業界の事がもっと大好きになりました。 今日もすんごい長いこと書いてしまいましたが読んでいただいてありがとうございます。新着投稿
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プロフィール
とら子
トラック運転できないAT限定免許配車マン。
トラックは街の風景だと思って過ごしてきた学生時代。 けど今はドライバーさんのおかげでご飯食べれています。
配車はドライバーさんと荷主の緩衝材。 目の前の利益より損して得取れ精神で配車係やらせてもらってます。 -
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