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トラドラ総研
安全靴、正しく選べてますか?
2023年10月13日 ドライバー
運送業や倉庫業など、物流業界では欠かせない「安全靴」。近年では、デザイン性の高いプロテクティブスニーカー(通称プロスニーカー)も数多く販売されている。しかし、扱う荷物の種類や床の状態など業務内容に合わせた適切な製品を選ばなければ、十分な安全性を発揮できないこともあるという。適切な安全靴はどのように選ぶべきかーー。日本安全靴工業会に取材した。
同会は、安全靴の普及や品質・性能の向上、労働安全衛生全般に寄与することを目的として活動している。会長会社を務めているミドリ安全(東京都渋谷区)の粂孝臣フットウェア統括部次長は、「かつての物流業界では企業の規模に関わらず、業務と照らし合わせてどの程度の安全靴が必要なのかなどを安全担当者が把握していたと聞く。現在はドライバーさん自身が調達することも増えており、安全靴の正しい選び方をサポートしたり、周知活動を行うのが当会の使命」と語る。
安全靴?プロスーニーカー?
そもそも、「安全靴」と「プロスニーカー」の違いは何か。前者はJIS規格(日本産業規格)に合格したものを指し、作業区分によって超重作業用(U種)、重作業用(H種)、普通作業用(S種)、軽作業用(L種)の4種類に分類されている。
後者は、JIS規格を基に作られたJSAA(日本保安用品協会)規格に合格したもので、普通作業用(A種)と軽作業用(B種)の2つの区分がある。
同次長は、「JIS合格品の安全靴と比べて、プロスニーカーは甲被や底材に使える素材に自由度があり、一般的なスニーカーと区別が付かないような軽量でデザイン性の高い商品も出ている」と説明する。
ただ、「素材の自由度を高くするため、耐久性の基準は若干低く設定されており、安全性ではJIS合格品の安全靴の方が上回る」とも。「行う作業によって使い分けることを推奨している」とし、同会では安全靴の選択要領をHPに掲載。「例えば、『20㌔㌘を超える重量物の運搬があるか』だったり、『床面に釘などの鋭利な突起物があるか』といった設問に答えていくと、適切な安全靴やプロスニーカーが確認できる」という。
同社では、「長年、販売しているが、『安全靴が必須な業務にも関わらず、プロスニーカーを履かれている』現場や『プロスニーカーを履くべき業務なのに一般的な靴を履かれている』現場もゼロではない」と肩を落とす。「当社スタッフが現場の状況や業務内容をヒアリングし、適した製品を提案している」。
安全靴のコツ
「安全靴」の履き方のコツについては、「サイズ選びも重要なポイント」と語る同次長。「普段履かれている一般的なスニーカーよりも少し余裕を持った大きさを選ぶこと」を推奨。「靴紐を締めずに足を入れて目一杯まで前方に移動させた時に、踵に人差し指が軽く入る程度が適したサイズ」。
また、「履き心地のために中敷きを利用されるユーザーも少なくないが、安全靴やプロスニーカーの安全性は『完成品での評価』になるため、一般的に市販されている中敷きを追加すると安全性能に影響を及ぼす場合もある」と指摘。「メーカー各社が製品専用の中敷きを販売している。問い合わせていただければ、製品に合った中敷きも提案できる」と付け加える。
履き方については、「脱ぎ履きのしやすさを優先して緩めに履くなど誤った履き方をすると、つま先を保護するために装着されている『先芯』に足が当たってしまい、思わぬ怪我をすることもある」と危惧。「面倒でも、脱ぎ履きのたびに靴紐を締め直し、正しい履き方をしていただけたら」と呼びかける。
「安全面では安全靴が勝るが、クッション性や軽さといった快適性はプロスニーカーが得意」と解説する粂次長。「倉庫内作業や重量物の荷役の場合は安全重視の安全靴、宅配はプロスニーカーというように、作業によって使い分けすることもお勧めしたい」と語った。
ドライバーの選び方は?
安全性能が高い安全靴と自由度が高く快適性に優れたプロスニーカー。現役ドライバーたちはどのように選んでいるのだろうか。現場の声を取材した。
①価格
まずは、価格帯について言及する声が多く挙がった。高級路線派からは、「あまり安いものを選ぶと靴底が早くダメになるね。雨の日は履けなくなる『危険靴』に早変わり」、「昔はお手頃価格で有名なメーカーの4000円ぐらいのものを履いていたが、値段が倍の靴に変えたら長持ちする上、足も疲れなくなった」といった声が寄せられた。
一方、お手頃派からは、「どうせ油とか泥でボロボロになるし、半年もてば御の字。夏場は臭くなるし、安いのをこまめに買い替えている」と、衛生面からも頻繁に履き替えられるよう、あえて安価なものを買うという声も。
②見た目
プロスニーカー愛用者は、色やデザインにこだわりを見せる。「私はずっとピンク色!」と好きな色をチョイスしたり、「紫地に黄色のパイピングが特徴のプロスニーカー」を履くドライバーからは「おじさんだけど、やっぱりテンションがアガる色ってあるわけですよ」と本音がこぼれた。
デザイン面でも、ドライバーそれぞれで「履きやすさ」や「業務・運転のしやすさ」のこだわりに違いが見られた。「ローカットタイプの方が動きやすい」「足首の靱帯が切れているので、しっかり固定する目的でミドルカット」「カゴ車によく足を轢かれるのでハイカットを履いている」などさまざま。「履き心地や履きやすさ、運転しやすさではローカットの方が勝るが、仕事をする時はハイカットの方が安全なので履き分けている」といった声も聞かれた。
中には、「色違いで仕事用と休日用に履き分けて、仕事用がダメになったら休日用をローテーションしている」と休日にも愛用しているドライバーも。
現役ドライバーいわく、価格と耐久性には関係性もあるという。「仕事内容にもよるが、運送関係だと『月1000円が目安』と聞いたことがある。例えば5000円の靴だと5か月くらい履けるということ。ほぼ合っていると思う」。
ほかにもこだわりが続々
そのほかにも、「スリッポンタイプで踵の所がゴムになっていて、踵を踏んで履くことも可能なもの」「長時間履きっぱなしなので、少々値段が高くても軽量でクッションが良いもの」など、ドライバーそれぞれにこだわりが。
一方、「鉄を扱っているため、安全靴を履かないといけない」(鋼材ドライバー)など、安全靴が必須の現場からは、「足に馴染むまでは硬いが、丈夫で3年以上履けた」「1㌧の荷物が足に当たっても怪我しなかった」など、安全性や使用感に満足している様子。
安全靴が必須なのかプロスニーカーで十分なのかは扱う荷物や現場の状況によって異なる。業務内容と照らし合わせた上で、自分に合った1足を見つけたいところだ。
ご協力いただきましたドライバーの皆様ありがとうございました!
ドライバーさん愛用品(ご提供写真)
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プロフィール
トラドラ総研 主任研究員
エミ
女性の視点からトラックドライバーを研究している。
都立大学(現・首都大学東京)卒。個人的にトラック業界紙を購読するほどのドライバーマニア。好きな車種は16輪低床。 -
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