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  • 配車女子 とら子の「一配一会」

    「物流の深刻な停滞は起きていない」──その一言に、現場はどれだけ打ちのめされるか

     

    2025年5月20日 New
    とら子独り言 新トラック法について

     
    • 20250520blog

    2025年5月16日の国土交通委員会での質疑を視聴して、強い違和感を覚えました。

    中野国土交通大臣が、「物流の深刻な停滞は起きていない」と発言されたのです。

    これが国の交通行政の中枢にいる人物の発言かと思うと、私たち現場で働く者としては言葉を失います。

    「物流の深刻な停滞は起きていない」の根拠とは?

     

    そもそも、物流の深刻な停滞とは何をさしているのか。

     

    私たちが日々現場で目の当たりにしているのは、まさに“慢性的な停滞”と“構造的な疲弊”です。

     

    それは決して一夜にして起きるような「ショック」ではない。

     

    じわじわと進行し、気づいたときには回復困難なところまで進んでいる「静かな崩壊」です。

     

    つまり「物流の深刻な停滞は起きていない」と言うのは現場で見える「静かな崩壊」を見ていないに等しいと私は考えています。

    数字のトリック──「10%未満の回答で成果がある」は本当か?

     

    もう1つ見過ごせないのは、運送業全体の10%未満のデータを用いて「改善の成果が出ている」と語られたことです。

     

     

    全日本トラック協会加盟の「3000社」が回答した、5000名の運送業従事者に研修を行った、などと大きな数字を羅列することでインパクトはありますが、

     

     

    運送業全体の数字から言えば全体の1割以下です。

     

     

    残りの90%以上を占める中小の運送会社の現場にはその「成果」は全く届いていないのです。

     

    統計データは見る人の視点でどうにでも解釈できます。

     

     

    しかし、業界の実態を理解する気がなければその数字は現場の声を覆い隠す道具にさえなってしまいます。

     

     

    大きな数字は確かに強い。だけど、その数字に隠された本当に知らなければいけない実態を隠してしまうことが往々に起こります。

     

     

    本当に知らなければいけないことを大きな数字で隠すようなことがあっては絶対にいけないのです。

     

    「今起きていない」からと言って「問題がない」とは限らない

     

    物流の停滞は、インフラは人材、仕組みの綻びから始まります。

     

    それは水面かで長く続いたのち、ある日突然「見える形」として現れます。

     

    というか、もう現れています。

     

     

    ドライバー不足、荷待ち時間の長期化、不公平な運賃体系、そして若い担い手の不在。

     

     

    ね、もうみんな百も承知のやつ。笑

     

    私たち現場ではもうこんな「兆し」を議論している余裕はないのです。

     

    にも関わらず、「深刻な停滞は起きていない」という言葉が出てしまう時点で、政策判断の感度が鈍っている証拠だと思ってしまいます。

     

     

    Xでポストしましたが、現職大臣の就任条件には「当該職務に関連する事業で最低でも1年間の業務実績がある」を追加したほうがいいと思う理由はこの感度を上げてほしいと言う思いからです。

     

    国会の場で語られる“現場なき物流論”に物申す

     

    現場のリアルを踏まえない発言はただの机上の空論に過ぎません。

     

    私たちは今、物流が抱える“静かな崩壊”を数字ではなく現実として毎日経験しています。

     

    それでもまだ「深刻ではない」と言えるのなら、それが現場が政治に届いていない証拠でもあります。

     

    「問題が見えていない」のではなく、「見ようとしていない」のではないか、と思いつつも

     

    私たち現場の声はもっともっと上げていく必要がある、と言う課題も見えてきます。

     

     

    最後に──“静かな崩壊”を見過ごさないでほしい

     

    運送業は産業の軸です。

     

     

    その軸がブレれば、経済も暮らしも動かなくなる。

     

    今必要なのは、見えにくい現場の声に耳を傾けること。

     

    そして、数字の外側にある「実感」「現場感」をもとに政策を作ること。

     

    国の中枢にいる人たちにはその責任があります。

     

     

    わからなければ聞いてください。そして見にきてください。

     

    現場を見ずして正しい策は作ることはできません。

     
     
     
     
     

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