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    2030年までに運送会社はどう変わる? 物流大綱の「業界の構造転換」とは?

     

    2026年10月9日 New

     
    • 20261009

    2030年までに運送会社はどう変わる?物流大綱の「業界の構造転換」とは?

     

    先日、兵庫県トラック協会支部主催の勉強会に参加しました。

     

    講師は、社会保険労務士・行政書士の瀧澤学氏。

     

    テーマは、運送会社への行政処分、適正原価、許可更新制、労務管理、ドライバーの健康管理など、多岐にわたるものでした。

     

    話を聞いていて感じたのは、これからの運送業界では、単に荷物を運べることや、運送業の許可を持っていることだけでは、事業を継続していくことが難しくなるのではないか、ということです。

     

    法令遵守、運賃、労務管理、経営体制。

     

    これらが個別の問題ではなく、すべてつながったものとして問われる時代がやってきます。

     

    今回は、勉強会で特に印象に残った内容を紹介します。

     

    1.「ながらスマホ」が会社の存続を揺るがす

     

    最初のテーマは、新名神高速道路で発生したトラック追突事故と、その後の運送会社への行政処分についてでした。

     

    講師の説明によると、今回取り上げられた事故では、該当する運送会社が30日間の事業停止となり、監査の結果、事業所と代表取締役が労働基準法違反で書類送検されたとのことです。

     

    事故を起こしたドライバー個人の問題だけでは終わらない。

     

    会社の運行管理や労務管理まで確認され、経営者自身の責任が問われる可能性があるということです。

     

    特に強調されていたのが、「ながらスマホ」の危険性でした。

     

    スマートフォンを操作しながら運転する。

     

    ほんの数秒のことかもしれません。

     

    しかし、大型トラックが走行する道路では、その数秒が重大事故につながります。

     

    そして、事故が発生すれば、ドライバーだけでなく、会社の事業継続そのものに影響が及ぶ可能性があります。

     

    運輸局などの運輸行政機関と労働基準監督署との連携も今まで以上に強くなっています。

     

    経営者や運行管理者に求められるのは、事故が起きてから対応することではありません。

     

    日頃からドライバーへの教育を行い、危険な運転を防ぐ仕組みをつくることです。

     

    「うちのドライバーは大丈夫」

    ドライバー自身の「自分は大丈夫」

     

    その思い込みが、会社を危険にさらすこともあります。

     

    安全教育を一度実施して終わりにするのではなく、継続的に取り組む必要があると感じました。

     

    2.適正原価は、運送会社の経営をどう変えるのか

     

    次に説明があったのが、運送業界にとって重要なテーマである「適正原価」です。

     

    講師からは、2027年に公表が予定されています。

     

    制度の具体的な内容は今後の公表を待つ必要がありますが、

     

    講師の説明では、適正原価との比較にあたり、一運行ごとの運賃だけではなく、

     

    年間の稼働距離や稼働時間などを累計して判断する方向が想定されているとのことでした。

     

    また、「適正原価を下回らない」という考え方における「継続して」の期間についても、1年間を予定しているとの説明がありました。

     

    ここで重要になるのは、日々の運行データです。

     

    • どれだけの距離を走ったのか。
    • どれだけの時間をかけたのか。
    • その運行で、いくらの運賃を収受したのか。

     

    こうしたデータを蓄積し、自社の運送実態を把握しておく必要があります。

     

    私は、適正原価の議論において、運賃の金額だけを見ていてはいけないと考えています。

     

    同じ運賃であっても、走行距離が違えば、拘束時間が違えば、積み降ろしの条件が違えば、運送会社に残るものは変わります。

     

    長距離を走っているのに、荷待ちが長い。

     

    運賃は変わらないのに、付帯作業が増えている。

     

    こうした実態を把握できなければ、自社の運送が適正な条件で行われているかどうかを判断することも難しくなります。

     

    適正原価制度への対応は、単に国が示す基準を確認するだけではありません。

     

    自社の運送に、どれだけの時間と費用がかかり、いくらの運賃を収受しているのか。

     

    その実態を数字で説明できるようにすることが、これからの経営に必要になるのではないでしょうか。

     

    3.2030年から始まる許可更新制。問われるのは会社の経営実態

     

    勉強会では、2030年から始まる予定の運送業の許可更新制についても説明がありました。

     

    講師の説明では、更新時には申請書だけでなく、

     

    運行管理体制の組織図、

     

    決算書、

     

    貸借対照表、

     

    損益計算書、

     

    賃金台帳、

     

    人事考課表など、

     

    さまざまな資料が必要になる見込みとのことでした。

     

    また、貸切バス事業の更新に必要な書類を参考に、同様の書類が求められる可能性があるとの説明もありました。

     

    さらに、事業主に対するテストについても言及がありました。

    ※具体的な提出書類や審査方法などについては、今後の正式な制度内容を確認する必要があります。

     

    ここで注目したいのは、確認される内容の幅広さです。

     

    運行管理だけではありません。

     

    財務状況、賃金、労務管理、人事管理など、会社の経営実態を多方面から確認することが想定されています。

     

    つまり、運送業の許可を持っているという事実だけではなく、適正な事業運営を継続できているかどうかが重要になるということです。

     

    日々の運行記録が残っていない。

     

    賃金の管理が曖昧になっている。

     

    労働時間を正確に把握できていない。

     

    こうした問題を抱えたままでは、今後の制度変更への対応に苦労することになるかもしれません。

     

    制度が始まってから慌てるのではなく、今のうちから管理体制を整えておくことが重要です。

     

    4.労務管理は「書類を整えるだけ」では済まなくなる

     

    今回の勉強会では、日常の労務管理に関する話もありました。

     

    過半数労働者代表の選任

     

    36協定などに関わる過半数労働者代表については、今後適正な選出手続きが重要になってきます。

     

    会社が一方的に指名するのではなく、労働基準法で定められた通り、労働者の意思に基づいて選出する必要があります。

     

    例えば、投票や挙手などによって、労働者の過半数が支持していることを確認できる方法が考えられます。

     

    書類上は整っていても、実際の選出手続きに問題があれば、適正な労使協定とは認められない可能性があります。

     

    法定休日の特定

     

    法定休日についても、休日を与えていればよいという考え方だけではなく、どの日を法定休日とするのかを明確にしておくことが重要です。

     

    休日の設定方法や労働時間の管理は、給与計算や時間外労働の管理にも関係します。

     

    労務管理は、書類を作成して保管しておけばよいというものではありません。

    実際の働き方と、書類に記録されている内容が一致していることが大切です。

     

    5.ドライバーの健康管理も会社の重要な責任

     

    個人的に印象に残ったテーマの一つが、ドライバーの健康管理です。

     

    運送業界では、交通事故だけでなく、業務中の脳・心臓疾患も重大な問題となっています。

     

    講師からは、健康診断で高血圧を指摘され、要検査や治療中となっているドライバーについて、朝夕の血圧を測定できる体制を整えることが望ましいとの説明がありました。

     

    血圧は時間帯によって変動するため、健康診断の結果だけでなく、日常的な健康状態にも目を向けることが大切です。

     

    もちろん、血圧の数値だけで労災認定や過労死認定が決まるわけではありません。個々の事案において、業務による負荷や医学的な事情などを踏まえて判断されます。

     

    それでも、ドライバーの健康状態を把握し、必要に応じて医療機関への受診を促すことは、安全な運行を続けるうえで欠かせません。

     

    人手不足だから休ませられない。

     

    仕事が詰まっているから、多少の体調不良は我慢してもらう。

     

    そのような運行管理になっていないでしょうか。

     

    ドライバーが健康でなければ、安全な運行は成り立ちません。

     

    健康管理は個人だけの問題ではなく、会社の安全管理や労務管理にも関わる問題です。

     

    6.2030年に向けて、運送業界はどう変わるのか

     

    今回の勉強会で、最も大きなメッセージだと感じたのが、物流大綱に記載された「運送業界全体の構造転換」についてです。

     

    講師は、国が進める政策の方向性を踏まえ、2030年までに業界の健全化が一気に進むとの見方を示していました。

     

    その中で、特に厳しい状況に置かれる可能性がある事業者として挙げられたのが、次のような事業者です。

     

    • 法令遵守の意識が低い事業者
    • 適正原価を下回る運賃しか収受できない事業者
    • 車両数が5両未満の事業者

     

    これらの事業者が今後どのような扱いになるのかは、正式な制度や運用を確認する必要があります。

     

    上記は、講師が示した今後の業界再編に関する見解です。

     

    ただし、運送業界の構造を変えていこうとする政策の流れを考えれば、

     

    これまでの経営方法をそのまま続けるだけでは対応できない事業者が出てくることは十分に考えられます。

     

    法令を守ること。

     

    適正な運賃を収受すること。

     

    労働時間や賃金を適切に管理すること。

     

    自社の経営状況を把握すること。

     

    どれか一つだけを改善すればよいという話ではありません。

     

    これらを総合的に見直していく必要があります。

     

    最後に

     

    今回の勉強会を通じて感じたのは、運送業界に求められるものが変わりつつあるということです。

     

    これまでは、荷物を運び、納期を守り、事故を起こさずに仕事を終えることが、運送会社にとって大きな役割でした。

     

    もちろん、それらが重要であることに変わりはありません。

     

    しかし、これからはそれに加えて、適正な運賃を収受できているか、

     

    労務管理が適切に行われているか、

     

    会社として健全な経営を継続できているか、

     

    といった点も厳しく問われていくことになります。

     

    そのために必要なのは、制度が始まってから慌てて書類を整えることではありません。

     

    日々の運行、労働時間、賃金、運賃、健康管理。

     

    現場で起きていることを正確に把握し、記録し、改善につなげていくことです。

     

    2030年は、まだ先のように感じるかもしれません。

     

    けれど、会社の体制を整えるには時間がかかります。

     

    今から何を見直し、何を準備しておくのか。

     

    それが、これからの運送会社の事業継続を左右することになるのではないでしょうか。

     

     
     
     
     
     

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