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  • 配車女子 とら子の「一配一会」

    正直者がバカを見る運送業界を、どう変える?

     

    2026年9月17日 New

     
    • 20260719

     

    先日、ある人と運送業界について議論をした。

     

    きっかけは、高速道路料金の見積もりについて。

     

    私は以前から、

     

    「運賃の見積もりを出すのに、高速料金を『実費』とするのはおかしくないか?」

     

    と思っている。

     

    なぜ見積もりの段階で、高速料金をきちんと項目として提示しないのか。

     

    そして深夜割についても、

     

    「深夜割は運送会社側の運行上の工夫であって、荷主から『深夜割で走ってください』と指示されるものではないのでは?」

     

    というのが私の考えだ。

     

    これに対して、

     

    「深夜割にしてほしいという指示は、逆の立場から考えればありがたいこと。運送会社はお客様に寄り添うべきではないか」

     

    という意見があった。

     

    確かに、長距離運行なら結果的に深夜の時間帯に高速道路を利用し、深夜割が適用されることもある。

     

    でも、私はそこで一つ引っかかった。

     

    「お客様に寄り添う」は、どこまでなのか

     

    運送会社はこれまでずっと「お客様の立場に立って」とやってきた。

     

    時間指定にも対応する。

     

    荷待ちにも対応する。

     

    付帯作業にも対応する。

     

     

    急な変更にも対応する。

     

    高速道路を使う。

     

    深夜でも走る。

     

    そうした「お客様のため」を積み重ねてきた結果、それがいつの間にか「やって当然」になってはいないだろうか。

     

    お客様に寄り添うことと、運送会社が負担を抱え続けることは同じではない。

     

    例えば、高速料金が通常3万円かかる仕事を、3万円の高速料金を含めた金額で見積もったとする。

     

    実際の運行で深夜割が適用され、2万円になった。

     

    契約時に「高速料金は実費精算」と決めているなら、もちろん実費で精算すればいい。

     

    しかし、そうでないなら、運送会社の運行計画や企業努力によって生まれた1万円の差額まで、最初から荷主側の利益として考える必要があるのだろうか。

     

    燃料を安く仕入れる。

     

    車両の稼働効率を上げる。

     

    帰り荷を確保する。

     

    高速料金を抑える。

    こうしたことも、運送会社の経営努力だ。

     

    すべてを「安くなったから荷主にも還元」としてしまえば、運送会社はどこで利益を確保するのか。

     

     

    ここで一つの意見に納得した

     

    私が、

     

    「今までと同じことを続けていても、運送業界は変わらない」

     

    と伝えたら、

     

    「運送会社の社長は、自社を守ることで精いっぱい。他の会社や業界のために、重い腰を上げる人は少ないのではないか」

     

    と言われた。

     

    これは、正直かなり納得したしぐうの音も出なかった。

     

    社長には自分の会社がある。

     

    従業員の生活がある。

     

    車両の支払いも、燃料代も、税金も保険もある。

     

    仕事を失うリスクもある。

     

    そんな社長に、

     

    「業界のために、うちだけ高い運賃を提示してください」

     

    と言っても、簡単にできるわけがない。

     

    だからこそ、今回の議論で私は別の問題に気づいた。

     

     

    運送業界は、業界全体をマネジメントする力が弱い

     

    一社一社の運送会社はある。

     

    荷主もいる。

     

    行政もいる。

     

    トラック協会もある。

     

    法律もある。

     

    それなのに、

     

    「運送業界全体を、どういう方向に持っていくのか」

     

    を継続的に考え、実行する主体が弱い。

     

    A社は高速料金を実費で請求する。

     

    B社は自社で負担する。

     

    C社は深夜割を使って安くする。

     

    D社は荷主の希望に合わせる。

     

    E社は運賃に高速料金を含める。

     

    それぞれの会社が、それぞれの判断でやっている。

     

    自由競争なのだから、それ自体は当然とも言える。

     

    しかし、その結果、

     

    正直に必要なコストを提示する会社ほど、価格競争で不利になる

     

    ということが起きる。

     

    「正直にやる会社」が損をする構造

     

    A社が必要なコストを計算して「この仕事は3万円必要です」と見積もる。

     

    一方でB社が「2万5千円でやります」と言う。

     

    荷主からすれば、安いB社を選ぶかもしれない。

     

    でも、その5千円をどこから削っているのかは分からない。

     

    高速料金なのか。

     

    荷待ちなのか。

     

    ドライバーの賃金なのか。

     

    利益なのか。

     

    それでも「安いほうがいい」という判断で仕事が動く。

     

    そしてA社も、

     

    「じゃあ、うちも少し下げよう」

     

    となる。

     

    その繰り返しが、業界全体の価格を押し下げていく。

     

     

    社長の良心だけでは変えられない

     

    だから必要なのは、

     

    「もっと各運送会社の社長が業界のことを考えよう」

     

    ではないと思う。

     

    必要なのは、

     

    「正直にやっても、自社だけが損をしない仕組み」

     

    だ。

     

    例えば、運賃だけではなく、

     

    ・高速料金

     

    ・燃料費

     

    ・荷待ち

     

    ・荷役・付帯作業

     

    ・時間指定

     

    ・深夜・早朝対応

     

    ・特殊車両

     

    ・キャンセル料

     

    など、価格を構成する条件を明確にする。

     

    「何となく無料」「昔からサービス」を減らし、

     

    「どんな条件で、その価格になっているのか」

     

    を見えるようにする。

     

    業界団体には、もっと「マネジメント」の役割が必要ではないか

     

    もちろん、トラック協会は行政機関ではない。

     

    個々の会社の契約を強制的に決めることもできない。

     

    だからこそ、業界団体には、

     

    「業界としての共通認識を作る」

     

    役割がもっとあっていいと思う。

     

    例えば、

     

    「こういう費用は運送サービスの価格として考える」

     

    「見積書にはこういう項目を明示する」

     

    「こういう付帯作業を無償にしない」

     

    「高速料金はこういう考え方で扱う」

     

    といった、業界としての標準的な考え方を示す。

     

    価格そのものを一律に決めるのではなく、

     

    価格形成のルールを透明にする。

     

    それなら、個々の社長が一人で戦わなくてもいい。

     

     

    「適正原価」はどこまでのものなのか

     

    私はこれまでずっと「運賃の下限設定」を作るべき、と発信し続けているが

     

    ここにきてようやく運賃の下限値になるかもしれない「適正原価」が生まれる運びとなった。

     

    適正原価は、「この運送を継続するには、これだけのコストが必要だ」と説明するための基準の一つになる。

     

    そして私は、この基準が単なる参考値として示されるだけではなく、適正な取引を促すための実効性ある基準として活用されることを期待している。

     

    で、今回の議論をして、適正原価の重要性がさらに増した。

     

    「4t車だから○万円」という数字だけではなく、その○万円が何によって構成されているのかが重要になってくる。

     

    つまり、適正原価とは

     

    「なぜ、その価格になるのか」

     

    を説明するためのもの。

     

    人件費はいくら必要なのか。

     

    車両を維持するのにいくらかかるのか。

     

    高速道路を使うならどう考えるのか。

     

    待機時間や付帯作業はどうするのか。

     

    深夜運行にはどんなコストがあるのか。

     

    それを一つ一つ見えるようにするための手段が適正原価であり、コストを無視した価格競争からサービス品質や運送条件を含めた競争へ移行する時代になっていくことを示唆している。

     

    だから運送会社は「運賃をどこまで下げられるか」だけではなく、品質や対応力、輸送条件など、価格以外の部分でも差別化をすることが求められる。

     

    これは最低保証の恩恵を受ける副作用でもあると思う。

     

    正直者がバカを見ない業界にする

     

    「お客様に寄り添う」ことは大切だ。

     

    でも、

     

    「お客様の言いなりになること」と「お客様に寄り添うこと」は違う。

     

    運送会社が無理をする。

    荷主は安く、便利に使える。

    それが当たり前になる。

    次の運送会社にも同じ条件を求める。

    断った会社が「融通の利かない会社」になる。

    結局、業界全体が無理をする。

     

    これでは、いつまでたっても変わらない。

     

    私が問題だと思っているのは、前述した深夜割そのものではない。

     

    本当に問題なのは、運送会社側が負担しているもの、企業努力によって生まれたもの、荷主が負担すべきものの境界が曖昧なままになっていることだ。

     

    だから必要なのは、一社の社長の勇気だけでも、行政だけでも、荷主の理解だけでもない。

     

    業界全体で「こういう取引をしていこう」という共通認識を作ること。

     

    そして、それを実行し、広げていくためのマネジメント機能を持つこと。

     

    私は、それがこれからの運送業界に必要なのではないかと思っている。

     

    「正直者がバカを見る」

     

    この言葉を、運送業界の当たり前にしたくない。

     

    正直にやる会社が損をするのではなく、

     

     

    正直にやることが、会社を守ることにつながる。

     

    そんな業界に変えていくために、まずは最低保証である「適正原価」について業界内でさらに活発な議論が必要だしその議論を取りまとめる役割を果たせる組織が必要である。

     

    今回の議論は、そこまで考えるきっかけになった。

     

    正直に必要なコストを提示する会社が「高い会社」とされるのではなく、適正な価格で、継続して安定した運送を提供できる会社が評価される。

     

    そんな業界に変えていくためには、個々の運送会社の努力だけではなく、業界全体で価格形成の共通認識を作っていく必要がある。

     

    今回の議論は、私にそのことを改めて考えさせてくれた。

     

    これからは適正な価格で継続、安定した運送を提供できる会社が得をする時代になっていくべきである。

     

     
     
     
     
     

    コメント

    ヤス より:

    こんちは!
    中々、深い問題提起ですね
    まず、見積もり出すときに
    一緒に運行計画も出すと
    高速代は実費分貰えることが
    多いです。
    積み終わりで、ここで休息取って
    この時間に運行するのでと
    説明がつくかと思われます。
    あと、原価ですが自社の原価計算は
    各社経費が違うのでバラつくのでは?
    原価計算叩いて、合わなければ
    やらなきゃいいだけの話ですよ。
    ちょっとザクっとコメントしちゃいました。すみません。

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